仏教の慈悲の心で築く豊かな夫婦関係

夫婦関係は、人生の中で最も大切な人間関係の一つです。

夫婦関係は、非常に親密であるがゆえに、些細なことで崩れやすい脆さを持っています。日常の忙しさやストレス、コミュニケーションの不足などが重なると、些細な問題が大きな亀裂に発展することもあります。

長い結婚生活の中で、時には衝突や誤解が生じることもあります。

そんな時、仏教の教えの一つである「慈悲の心」がどのように夫婦関係を改善し、豊かにし、強化するのかについて今回はご紹介します。

1つ、些細な問題が大きな亀裂に発展した夫婦関係の例について話をしたいと思います。

これはとある夫婦の話です。奥さんをAさんとさせていただきたいと思います。Aさん夫婦は結婚5年目の夫婦です。奥さんのAさんは、基本的に旦那さんの事が大好きなのですが、1つAさんは旦那さんに大きな不満がありました。

それは、Aさんが何を話しても旦那さんはスマホをいじったりしてちゃんとAさんの話を聞いていないという事です。そして話を聞いていないのでよく後になって「え、そうだったけ?」とAさんに尋ねてくる所です。

そんなある日、Aさんは旦那さんと話題のバームクーヘンを一緒に食べようと約束をしていました。そして、Aさんはバームクーヘンを買ってきて冷蔵庫に入れておきました。

しかし、その夜にAさんはインフルエンザになってしまって寝込んでしまいました。そして、インフルエンザが完治するまで3日間かかりました。その病気療養中の間、Aさんは旦那さんと一緒にバームクーヘンを食べるのを楽しみにしていたわけです。

そして、病気が治って楽しみにしていたバームクーヘン食べようと思い冷蔵庫を開けたらそこに置いていたはずのバームクーヘンがなくなっていました。

そこで、旦那さんにバームクーヘンはどうなったのか聞いた所、旦那さんは「あ・・あれはこの前実家にもっていて実家の両親と一緒に食べたんだよ・」と答えました。

それを聞いて、Aさんは怒ってしまった訳です。「なんで、一緒に食べようと約束していた。バームクーヘンを勝手に実家に持っていって食べたの?」、「なんで、人の話を聞いていなかったの?」、「いつもあなたはそう・・。」とバームクーヘンをきっかけとして、これまでの旦那さんに対する不満も相まってAさんは爆発してしまいました。

この喧嘩の後、Aさんは実家に戻りしばらく家には戻らなかったそうです。その後、何度か旦那さんとの話し合いの末、Aさんは旦那さんと仲直りをして家に戻ったそうです。

些細な事が原因で大きな夫婦喧嘩に発展してしまったのです。Aさん夫婦に起きた大喧嘩は、どの夫婦でも一歩間違えれば起こりうる喧嘩です。

こうした些細なすれ違いで起こる喧嘩を防ぐためには、互いへの思いやりと理解が欠かせません。ここで重要となるのが、仏教の「慈悲の心」です。

仏教における「慈悲」とは、他者の幸福を願い、苦しみを取り除こうとする心のことです。慈(じ)は他者の幸福を願う心、悲(ひ)は他者の苦しみを取り除こうとする心を意味します。

この慈悲の心を夫婦関係に応用することで、お互いの絆はさらに深まります。

相手を理解しようとする努力

夫婦関係では、相手の気持ちや考えを理解しようとすることが非常に重要です。日常の些細な会話の中でも、相手の立場に立って考える習慣を持ちましょう。

相手に共感する

互いの感情に寄り添い、共感を示すことが大切です。相手が悲しんでいる時はその悲しみを受け入れ、喜んでいる時は一緒に喜ぶことで、信頼関係が深まります。

無条件の親切心

見返りを求めずに親切を行うことが、夫婦間の愛情を育む基盤です。小さな親切や気配りが、お互いの絆を強くします。

日常生活での思いやり
相手の疲れを感じとって家事を手伝ったり、代わりに買い物をしたり、子供と一緒に過ごす時間を増やしたり、疲れている時にマッサージをしてあげるなど、日常の中で相手の事を思いやって、相手の助けになる行動をする事が大切です。
コミュニケーションの改善
お互いの気持ちや考えを率直に話し合う時間を作りましょう。相手の話を遮らずに最後まで聞き、共感を示すことでコミュニケーションの質が向上します。また、相手が話しやすいように柔らかい口調・優しい口調で語りかける事も重要です。
感謝の気持ちを忘れない
パートナーに対する感謝の気持ちを日々伝える事が重要です。「ありがとう」と言うだけでも、相手の心に温かさが伝わります。一本のろうそくは 何千本ものろうそくに火を灯すことができます。同様に感謝の気持ちを伝える事は、相手の幸福度を増加させます。感謝の気持ちを伝えられたパートナーは、その労力が認められたと感じ、自信と自尊心の向上につながります。感謝を伝える事は夫婦の絆を深め、家庭の雰囲気をより前向きなものに変える事ができます。「ありがとう」、それはささいな一言かもしれませんが、その感謝の事があるかないかで相手の気持ちは大きく変わります。

仏教の慈悲の心は、夫婦関係をより豊かで深いものにするための強力なツールです。お互いが、慈悲の心持つと夫婦関係は驚くほど良くなります。夫婦関係改善の一助になればと思い、参考までに話をさせていただきました。少しでも、今日の話があなたの役に立つと嬉しいです。

合掌

著者:釋 兼高(しゃく けんこう)浄土真宗本願寺派 順教寺 副住職

1980年生まれ。2002年にアメリカの大学を卒業し、2007年に大学院を修了。2008年には得道し、僧侶の道を志す。その後、社会経験やビジネスの知見を深める上で人材育成系コンサルティング会社に就職し、13年間勤め営業経験や講師経験やコンサル経験を積む。2021年に退職し、家業である寺院を継ぐために入寺。
日々、仏の道に精進しながら浄土真宗本願寺派の僧侶としての道を歩む。これまでの職務経験を通じて培ったスキルや知識を活かし、分かりやすく仏教や浄土真宗本の教えを伝えるために「生活に役立つ仏教の教え」、墓地・永代供養墓の管理者の視点から「浄土真宗僧侶が伝えたい墓地・納骨堂選びの話し」のブログやお寺を身近に感じてもらうために、「若院(じゃくいん)のつぶやき」の情報発信を行う。