納骨堂選びの失敗談#1 交通の便が悪い納骨堂を選んだ人の末路

こんにちは、皆さん。墓地・納骨堂調査坊主のケンコウです。

今回は「交通の便が悪い納骨堂を選んだ失敗談」を具体的にご紹介します。アクセスの良し悪しは、納骨堂選択後の満足度に大きく影響する重要なポイントです。

失敗例から学び、後悔のない選び方をしましょう。

立地で納骨堂を選んだ田中さんの話し

田中さん一家(仮称)は、祖父の遺骨を安置するために納骨堂を探していました。田中さん一家にとって理想的な納骨堂は、家族全員が集まりやすく、訪問しやすい納骨堂でした。そのため、納骨堂までのアクセスの良さを最優先事項として納骨堂を探していました。

そのため、田中さん一家はパンフレットやウェブサイト、そしてそれぞれの納骨堂の口コミやレビューを吟味しました。そして、多くの納骨堂の中から、主要駅から近いという点が目に留まった一つの納骨堂に注目しました。

パンフレットを取り寄せると、「主要駅からバスで10分」「徒歩圏内」といった魅力的な文言が並んでいました。また、駅近」「アクセス便利」といったキャッチコピーが目立ち、具体的なアクセス方法としてバスや車の利用が推奨されていました。これにより、公共交通機関を使ったアクセスもスムーズだと田中さん一家は考えました。

そして、契約前に田中さん一家は実際にその納骨堂の現地見学に行きました。主要駅からバスに乗り、指定されたバス停で降りて納骨堂まで歩いてみました。このとき、バスの本数や歩く道のりについて特に問題は感じませんでした。納骨堂自体も清潔で雰囲気が良く、家族全員が納得できる場所だと感じました。

また、ネット上の口コミやレビューサイトによると「交通の便が良く、訪問しやすい」「家族全員が集まりやすい」といった高評価が多く見られました。その結果、田中さん一家は、他の選択肢を考えることなく、この納骨堂を第一候補として考えるようになりました。

最後に、田中さん一家は家族会議を開きました。両親、兄弟姉妹全員が集まり、現地見学の感想を共有しました。パンフレットと口コミの情報に加え、実際に訪れたことで得た安心感から、この納骨堂が最も良い選択だと意見が一致しました。特に、高齢の両親にとって交通の便が良いという点が大きな決め手となりました。

納骨堂を選んだ田中さん一家の後日談

田中さん一家が納骨堂を購入してから数年後、田中さん一家は何度も納骨堂を訪れるうちに、現実は想像とは大きく異なるという事を自覚し始めていました。

主要駅から納骨堂へ向かうバスは1時間に1本~2本しかなく、タイミングが合わないと長時間待つことになりました。特に週末や祝日はバスの運行本数がさらに減り、家族全員が集まるのが難しくなりました。

さらに、バス停から納骨堂までは少し勾配のある坂道がありました。納骨堂購入時には苦もなかった坂道でしたが、歳を重ねるとともにその坂道を登るのが困難になってきました。70歳を過ぎた母親は特にそうでした。また、パンフレットには「徒歩5分」と書かれていましたが、実際には徒歩10分以上かかり、この点も墓参りがしんどくなる要因の一つとなっていました。

車でのアクセスも考慮しましたが、駐車場が狭く、休日やお盆の時期には満車になることが多く、遠くの臨時駐車場に停めなければならないことが頻繁にありました。さらに、納骨堂周辺には飲食店や休憩所がなく、遠方から来る家族にとって休憩や食事をする場所にも困りました。

田中さん一家は、実際の訪問で交通の不便さを痛感しましたが、それでも家族全員が祖父を思いやる気持ちから、できる限りの努力をして納骨堂を利用しようと決意しました。しかし、その後も毎回の訪問が家族・親族にとって負担になることは避けられませんでした。

バスの本数が少ないため、バスでしか来れない親族は祝日や行事の混雑時には待ち時間が増えるため、親族や家族が集まることが難しくなりました。高齢の母親は坂道のために歩くのが大変で、何度も転倒しそうになることもありました。

また、駐車場の問題も常に頭を悩ませました。納骨堂周辺の駐車場が満車であることが多く、特にお盆やお彼岸の時期には、遠方から来た家族が臨時の駐車場を探す苦労が絶えませんでした。遠方から来る親戚が長時間の移動の後に、駐車場の確保に手間取り、疲れが募ることもしばしばでした。

さらに、納骨堂周辺の環境も不満足でした。飲食店や休憩所が少ないため、訪問の際に休憩する場所や食事をとる場所が限られ、訪問の際の不便さが増しました。

これらの問題に直面しながらも、田中さん一家は祖父の供養を大切にし、家族全員で協力し合って乗り越えていきました。特に、母親の健康状態を考慮し、訪問時のサポートを徹底することで、少しでも負担を軽減しようとしました。

しかし、長期間にわたってこれらの問題が続く中で、田中さん一家は改めて納骨堂の選定基準を見直す必要性を感じるようになりました。将来的には、交通の便や周辺環境だけでなく、家族全員が安心して訪れられる環境かどうかも考慮し、より適切な納骨堂を選ぶことが重要だと痛感しました。

田中さん一家の経験を通して学べる事~納骨堂のロケーション選びで失敗しないためのポイント~

田中さん一家の経験を通じて学べることは、納骨堂や墓地を選ぶ際にロケーションの重要性を見誤らないことです。以下のポイントを参考に、失敗を避けて最適な場所を選ぶための準備をしましょう。

  1. 実際の現地見学を重視する: パンフレットやウェブサイトの情報だけでなく、実際に現地を訪れて、交通の便や周辺環境を確認しましょう。バスや車でのアクセスが想像と異なる場合があります。また、交通の便に関しては現時点だけでなく将来的な事(将来の交通環境や体の変化)も踏まえて検討する事が重要です。
  2. 周辺環境の充実: 訪問時に便利な飲食店や休憩スペースが近くにあるかどうかも重要です。家族が長時間過ごす場合、快適な環境が訪問の質を左右します。
  3. 交通手段の確認: バスや電車などの公共交通機関が頻繁に利用できるか、または駐車場の状況が十分かどうかも検討しましょう。特に祝日や行事の時期には混雑する可能性も考慮に入れてください。また、将来の交通環境についても予想して検討しましょう。
  4. 家族全員が訪れやすい場所: 高齢者や体の不自由な方も含め、家族全員が安全かつ快適に訪れられるかどうかを考えてください。坂道や階段の有無、歩行距離なども重要な要素です。

これらのポイントを踏まえて、慎重に納骨堂や墓地を選ぶことで、家族の皆さんが安心して供養を行える場所を見つけることができます。失敗を避け、心穏やかに故人を追悼できる環境を整えるために、しっかりと準備をしてください。

合掌

著者:釋 兼高(しゃく けんこう)浄土真宗本願寺派 順教寺 副住職

1980年生まれ。2002年にアメリカの大学を卒業し、2007年に大学院を修了。2008年には得道し、僧侶の道を志す。その後、社会経験やビジネスの知見を深める上で人材育成系コンサルティング会社に就職し、13年間勤め営業経験や講師経験やコンサル経験を積む。2021年に退職し、家業である寺院を継ぐために入寺。
日々、仏の道に精進しながら浄土真宗本願寺派の僧侶としての道を歩む。これまでの職務経験を通じて培ったスキルや知識を活かし、分かりやすく仏教や浄土真宗本の教えを伝えるために「生活に役立つ仏教の教え」、墓地・永代供養墓の管理者の視点から「浄土真宗僧侶が伝えたい墓地・納骨堂選びの話し」のブログやお寺を身近に感じてもらうために、「若院(じゃくいん)のつぶやき」の情報発信を行う。