浄土真宗では位牌を置かない理由
親戚で不幸があって良い位牌を売っている仏具屋さんがないかと相談を受けたんですが、フミオ住職は良い位牌を売っている仏具屋さんを知りませんか?
う~ん。ナヤムさん、言いにくいんだけど、浄土真宗では基本的には位牌は置かないんだよ。
え~~~! 位牌を置かないんですか・・。
そうなんだよ。それじゃ~今日は浄土真宗ではなぜ、位牌を置かないのか説明しよう。
目次
位牌とは
位牌とは、亡くなった方の戒名を木の板に記したものです。位牌には「故人の魂が宿っている」と信じられています。
多くの宗派では、位牌を故人の供養の対象として仏壇に安置して、香・華・灯明・飲食を奉納し、日々お参りすることを説いています。
位牌は、元々は儒教の風習でした。それが後に、中国仏教に取り入れられて鎌倉時代から室町時代頃に日本に伝わったそうです。
その後、江戸時代に入り庶民の間でご位牌を仏壇に安置するという文化が根付いて現在に至るそうです。
浄土真宗では、位牌を置かない理由
浄土真宗では、位牌を不要としています。なぜなら、阿弥陀如来を信じるものは、「即得往生(そくとくおうじょう)」するとしているからです。
即得往生とは、命を終えると極楽浄土に直ちに生まれ変わるという考えです。
即得往生するので、霊がこの世にとどまることはありません。この世にとどまることがないのだから霊が何かを依代とする必要もないわけです。
浄土真宗では何を位牌の代わりに置くのか
浄土真宗では、位牌を仏壇に置きません。代わりに故人が生前あるいは葬儀の際に授けられた法名を置きます。
そして、法名に向けてお参りをします。お参りをする目的は、故人の方がお浄土に生まれ変われるようにとお祈りするためではありません。
その目的は、故人との別れを偲び、故人との別れを通じて出会った仏縁を大切にすることです。そして、自分たちがこれからより幸せになるための道を模索するためです。
仏教は、人々が苦から抜け出し幸せに生きていくための道を説く宗教です。そのため、浄土真宗では故人の一番の供養は、ご遺族が故人の死を受容して新たな自分達の幸せに出合うことであると考えています。
そんな訳で浄土真宗では、遺影の代わりに法名に向けてお参りをすることで故人を偲び、仏教の教えに耳を傾けていただくことを大切にしています。
なるほど、浄土真宗では故人はすぐにお浄土に生まれ変わるから霊はこの世に残らないという考え方なんです。だから、ご位牌はおかないんですね。
そうなんだよ。ナヤムさん。だから、親族の方にも位牌は置かなくても大丈夫ということを伝えてあげてくれるかな。
著者:釋 文雄(しゃく ぶんゆう)浄土真宗本願寺派 順教寺 住職
1948年に生まれ、1960年に得度を受け、1974年には寺院の住職の資格を得る。以後、本願寺派の布教使としての活動を開始。1977年に当寺院の第14代住職に就任し、現在に至る。浄土真宗本願寺派の僧侶として、50年以上の経験があり、布教使として各寺院や講演会での法座の登壇回数も延べ1,000回を超える。これまでの、浄土真宗僧侶としての経験を踏まえて仏教や浄土真宗の教えを伝えるために「教えて住職さん」のブログの情報発信を行う。