法名と戒名の違い
浄土真宗では法名、他宗派では戒名が使われていると思います。この法名と戒名の違いて何ですか?(門徒Kさんからの質問)
う~ん。この質問・・私も同じ事を考えていました。私の予想だと、法名は浄土真宗で戒名は浄土真宗以外の宗派の仏弟子の名前だと思うんですが・・・どうでしょうフミオ住職??
・・・、ナヤムさん、惜しいです。確かに、宗派の違いもありますが、それ以外にも様々な違いが戒名と法名の間にあります。
この質問も良く、お参りにきた方や門徒の方からいただく質問です。それじゃ~今日は法名と戒名の違いについて説明しましょう。
目次
法名と戒名の主な違い
戒名と法名ともに仏弟子となった証として授けられる名前です。戒名は、主に真言宗、浄土宗、天台宗、曹洞宗や臨済宗などの宗派で仏弟子になる際に与えられる名前です。一方で、法名は浄土真宗における仏弟子になる際に与えらえる名前です。どちらも、仏弟子としてもらえる新たな名前ということにおいては意味は同じです。
しかし、各宗派における仏弟子として守らなければならないルールは違います。法名を使用する浄土真宗では、仏の教えである法を守ることがもとめられます。戒名を使用する真言宗、浄土宗、天台宗、曹洞宗や臨済宗などでは厳しい戒律を守ることがもとめられます。
守らなければならないルールの違いは、浄土真宗と他の戒名を使用する宗派の仏教に対する考え方の違いがあります。浄土真宗は、修行ではなく生活のなかで仏教(阿弥陀仏)の教えを聞いて守ることで悟りの道を開き救われることを目指す仏教です。その考えの裏には、厳しい戒律を守って修行できない人も救済しようという考え方があります。そのため、法名を得た仏弟子には仏教の教え(※ブログ「法名て何?」の中で説明しています。)に従い生きることが求められます。
一方で、戒名を使用する宗派は、仏教の厳格な戒律を守って修行を行い悟りの道を開き救われることを目指す仏教です。そのため、戒名を得た仏弟子には戒律を守ることが求めれます。戒律を守ることを悟りの入り口だととらえています。
そうなんですね・・。法名と戒名の間には色んな違いがあるんですね・・。全然、知りませんでした。
そうだね。2つの名前の裏には、それぞれの宗派の仏教の考え方の基本理念が隠されているんだよ。
深い意味がありますよね・・。それに、戒名をもらう際に守らなければならない戒律もすごく厳しそうですよね。ちなみに、どんな戒律があるんですかね、フミオ住職?
そこにも、興味がいくなんてナヤムさんの好奇心は底なしだね。それじゃ~次は戒律や戒名をもらう上で守らなければならない戒律について説明しよう。
戒律とは
戒律の意味は、仏教の修行者が守らなければならない生活規律です。戒律は、戒と律という2つの漢字で構成されています。
戒の語源は、戒の語源はサンスクリット語のシーラ(śīla)からきています。意味は、「習慣、性質、行為」などです。その当初の戒の考え方が発展して、戒は仏陀(ぶっだ)の教えを実践する者が自己自身に対して義務づける課題ととらえられるようになりました。
律の語源は、サンスクリット語のビナヤ(vinaya)に由来しています。意味は、「規則やルール」などです。その当初の律の考え方が発展して、律は仏教の修行僧が順守すべき規則ととらえられるようになりました。
戒は自発的に守るべきルールの意味合いが強いですが、律は修行者を拘束する守らなければいけない規則(法律のようなもの)という意味合いがあります。この2つの言葉から構成される戒律は、2つの言葉の特徴を含んでいます。
戒名を授かる上で守るべき戒律
出家をしない仏教の信徒(在家信徒)が日々守らなければならない戒律は、5つ、8つ、10とも言われたりしています。ここでは、在家仏教徒が守らなければならない戒の中で代表的な五戒(ごかい)についてご案内します。五戒を下記に記載します。
不殺生戒(ふせっしょうかい)
不殺生戒は、生あるものを殺してはならないという戒です。すべての生きとし生けるものが対象となります。
不偸盗戒(ふちゅうとうかい)
不偸盗戒とは、他人のものを盗ってはならないとする戒です。
不邪淫戒(ふじゃいんかい)
不邪淫戒は、パートナー以外と性交をしてはならないとする戒です。
不妄語戒(ふもうごかい)
不妄語戒はウソをついてはいけないという戒です。
不両舌戒(ふいんしゅかい)
不飲酒戒はお酒を飲まないという戒です。
戒名を得た、仏弟子は日々この5戒を守ることが求められます。これら5つの戒の意味合いは、単純ですが我々人間が生きていく上ですべてを守ることが困難な人がほとんどではないかと思います。そんな戒を守ることが困難な人もどうにか救済できないかと親鸞聖人が考えて生み出したのが浄土真宗という宗派です。そのため、浄土真宗では厳しい戒律を守ることではなく、仏の法に従う事を仏弟子に求めているわけです。
なるほど~浄土真宗は我々一般人も救われやすい宗派なんですね。親鸞聖人、浄土真宗を創始していただきありがとうございます。
一般の方も救われやすいというのも、多くの人に浄土真宗が支持されている理由の一つなんだよ。
著者:釋 文雄(しゃく ぶんゆう)浄土真宗本願寺派 順教寺 住職
1948年に生まれ、1960年に得度を受け、1974年には寺院の住職の資格を得る。以後、本願寺派の布教使としての活動を開始。1977年に当寺院の第14代住職に就任し、現在に至る。浄土真宗本願寺派の僧侶として、50年以上の経験があり、布教使として各寺院や講演会での法座の登壇回数も延べ1,000回を超える。これまでの、浄土真宗僧侶としての経験を踏まえて仏教や浄土真宗の教えを伝えるために「教えて住職さん」のブログの情報発信を行う。